お店のご紹介

ビルの谷間によみがえるコーヒー文化

蝶ネクタイ、黒い鼻緒の草履に五本指の白い靴下…大坪朗さんは、人を包み込むようなほんわかムードのマスター。「道教(タオイズム)」から名前をとり、5年前にビルの一角に店を開いた。
見慣れないコーヒーの名前が並ぶメニューから、珍しそうなパプアニューギニア・シグリを頼む。紅茶のような透明感、フルーティーな酸味の中に、しっかりとした味わいがある。「シグリとは、大農園の名前ですよ。信頼する農園の豆を焙煎し、おいしいコーヒーを知ってもらいたいですね。それとここでしか味わうことのできないコーヒーチーズというのがあるんですよ。」その作り方は、水出しコーヒーにチーズを一晩漬け込んで、焙煎するときの煙でスモークしたものなのだそうだ。みかけは、コーヒー色だが、チーズの味がする。
「土の香りが漂ってくるでしょう」と、大坪さんは玄関わきに積み上げられているシールパックの中から生豆の2.5キロを量り、温めたフジローヤルの焙煎機にかける。パチパチと1回目のはぜがきて、2回目のプチプチのはぜでスプーンを釜に入れ、取り出した豆をかじり、真剣な顔で豆のうまみがしっかり出ているか確かめる。豆の個性をしっかりとらえ、「ブラジル・トミオ・フクダ」「グァテマラ・アンティグア」など11種類の焙煎を行なっている。
コーヒーに惚れ込み、ひたすらおいしいコーヒーを求める大坪さん。コーヒー好きな人が集まり、ついコーヒー談義に花を咲かせてしまう。

(2012年8月発行 佐賀カフェ散歩 より)